はじめて人を雇うときの手続き〜従業員の
雇用に必要な書類や申請ルール
今まで一人で仕事をしてきた方も、忙しくなってくると一人では対応できないことが出てきます。また、一人より複数の人間で業務を行ったほうが良い場合もありますし、家族に手伝ってもらうという選択肢もあります。ここでははじめて人を雇う時に行うべき手続きや必要書類、提出期限などを解説します。
個人事業主が人を雇うときは、個人事業主にとってさまざま義務が発生します。給料を決めて、支払日に支払えばよいというわけではありません。
- 人を雇う際には、労働条件のうち重要事項は書面で通知しなければならない
- 労災保険は従業員を雇えば必ず加入、雇用保険は対象となる従業員を雇えば必ず加入しなければならない
- 労働者名簿、出勤簿、賃金台帳は必ず作成しなければならない
以上3点は必ずおさせておきましょう。
STEP01
労働条件の明示
人を雇うときには、賃金や労働時間その他の労働条件を明示しなければならないことが労働基準法で定められています。これは正社員に限らず、契約社員やアルバイトなど雇用形態にかかわらず明示が必要です。採用が決まったら「労働条件通知書」もしくは「雇用契約書」を作成します。なお、労働条件通知書とのは、労働条件通知書が雇用主からの一方的な通知書面なのに対し、雇用契約書は雇用主と従業員それぞれが署名捺印し、各1部ずつ保管する点で異なります。
労働条件通知書に
明示しなければならない事項
- 労働契約の期間
- 就業場所、従事すべき業務
- 始業および終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩時間、休日・休暇、交代制勤務の場合は就業時転換に関する事項
- 賃金の決定・計算・支払い方法・締切・支払日、昇給に関する事項
- 解雇の事由を含む退職についての事項
原則として書面で明示しなければなりませんが、 2019年4月以降は、労働者が希望した場合に限りファックスやメール、SNS等での明示も認められるようになりました。
STEP02
社会保険の手続
健康保険、厚生年金保険、介護保険といった「社会保険」は、事業主と従業員それぞれにおいて加入義務の対象となる場合、所定の手続きを行い、加入しなければなりません。社会保険の保険料は、雇用主と従業員とで折半して負担します。
STEP03
労働保険の手続き
労災保険は雇用主が全額負担。雇用保険は雇用主と従業員の双方で負担します。
従業員を雇用することになった場合は、「労働保険」(労災保険・雇用保険)の加入手続きも行います。労災保険は、従業員が業務中や通勤中に病気、ケガなどをした際に医療費が補償される制度です。保険料は雇用主が全額負担します。一方、雇用保険は、従業員が失業したり、育休・介護休暇中に給付金が受けられる制度です。保険料は雇用主と従業員の双方で負担します。これらの労働保険は、雇用形態にかかわらず労働者が1人でもいる場合、社会保険とは別に加入が原則義務付けられていますのでご注意ください。(農林水産業で常時5人未満の事業所は任意)。
STEP04
税金の手続き
従業員は給料をもらって収入を得ることになると、その所得に応じて所得税や住民税を納めなくてはなりません。このとき、給料を支払う事業主があらかじめ納税額を給与から差し引き、従業員に代わって税務署に納税することになっています。このように給料の支払い段階で税金分を徴収することを「源泉徴収」と言います。 源泉徴収の義務が発生した場合の手続きとして、はじめて従業員を雇用してから1か月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を税務署に提出する必要があります。また、各市町村へ住民税の特別徴収の手続きも必要です。
STEP05
労務管理の書類の準備
労務管理に関して、以下のような書類も揃えなければなりません。
- 賃金台帳:従業員の氏名、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、基本賃金、手当の額などを記載
- 労働者名簿:従業員の氏名、生年月日、従事する業務の種類、雇入の年月日、履歴などを記載
- 出勤簿(タイムカード等):従業員の氏名、出勤日、始業・就業時刻、休憩時間などを記載これらは「法定三帳簿」とも呼ばれ、従業員が退職したあとも3年間の保管義務があります
※2020年4月の労働基準法一部改正により、保存期間が5年間に延長されましたが、当分の間は3年間で継続されます